ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「えっ……」

 ナツは目を丸くしている。


「呼んでみて」


「いっ今!?」


「うん。今」


 ナツの顔が、赤くなっていた。


「……………………し」


 発音するかしないかのところで、ナツは固まった。口は旬の『しゅ』の形だ。


 ナツは、どんどん真っ赤になって、もうゆでダコとそんなに変わらないぐらいだ。


「……やっぱり今は無理!」

 ナツはそう言って俯いてしまった。


 でも、名前を呼ぶぐらいで恥ずかしがってるナツは……


「可愛いから許す♪」

 俺は思ったことを素直に口にした。


「なっ何言ってるのっ……」


 狼狽えてるナツが可愛くて俺は笑った。


「もうっ! 早くバイト行かないといけないんでしょ!」


「はいはい」

 見え見えの照れ隠しに俺は笑いながら頷いた。


「じゃあまたな!」


「うん。またね」

 俺が手を振ると、ナツも小さく振り返してくれた。

 そうしてくれただけで、俺も今からのバイトを頑張ろうと思えて、歩き出す一歩が軽かった。



 今日のデートで、確かに俺とナツの距離が縮まったと思う。

 ていうか、むしろ絶好調(のはず)。


 今日も、俺はナツのことを知って、もっとナツのことを好きになった。


 それと同じように、ナツも、ほんの少しでも、分からないくらいでもいいから、俺のことを考えて、好きになっていてほしい。


 簡単に上手くいくことはないのは分かっているけど、俺はそんな風に思っていた。



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