ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「ナツ……すっげー可愛い……」

 その言葉に、あたしは我に返った。


「えっ……」

 旬君が、物凄く熱い視線をあたしに向けていた。


「髪巻いてる?化粧も前と違う?」

 すぐにそうやって聞かれた。


「あ……うん。今日は休みの日だから、ちょっとね」

 あたしは、自分にした言い訳と同じようなことを言って、誤魔化しながら答えた。

 決してデートだからこんなに気合い入った格好じゃないということを。


「すっげー似合う!」

 旬君は力強く言った。


 褒められてるのはあたしなのに、旬君の方が嬉しそうだった。


 あたしは面と向かってそう言われるのが恥ずかしくて、下を向いた。


「あ……ありがとう」


 それでも、嬉しくないと言ったら嘘だ。

 少しだけ、気合い入れてきてよかったと思った。


「旬君……それで、今日はどこ行くの?」

 あたしは話題を変えて、照れくさいのを誤魔化して、顔を上げた。


「んー……買い物とかしよっかなーって。ナツ、何か欲しいものとかある?服とか」

 旬君にそう聞かれ、あたしは困ってしまう。


「え……あたし、丁度先週に買い物に行ったから、特に必要なものなんてないんだけど……」

 現に今着てる服は、先週買ったばっかりのやつだし。


 あたしが答えると、旬君は固まってしまった。


 あたし、何か変なこと言った?


「旬君?」

 何も言わない旬君に、あたしは首を傾げて声をかけた。


「あ……じゃあ、ナツ。俺に付き合ってくんない?」

 旬君は思い出したようにそう言った。


「うん。いいよ」

 特に異論もなく、あたしは頷く。


「じゃあ、行こう」

 旬君はあたしの隣に立って歩き出し、あたしはそれに付いて行った。

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