ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「ナツ、どしたの? 何かあんの?」
「うん。ダウンが安くなってるなーって思って」
旬君に聞かれて、あたしは答えた。
「時期的に冬物は安くなるけど、まだ寒いからしばらくは着れるし、今買った方が得なのよね」
流行り廃れがありそうなのは躊躇するけど、ダウンなら今買っても来年も着られそうだし。
男物だし、買うつもりはないけど、こんなことを考えるのが好きだ。
「買おっかな……」
旬君は呟くようにそう言いながら、ダウンの方へ向かった。
「買うの?」
あたしもそれに付いていく。
「うん。これ、もう袖とかボロボロだし、そろそろ替えよっかと思って。ちょうど安いし」
旬君のダウンを見てみると、袖口が破れて、ほつれている。確かに、買い換えた方がいいかもしれない。
「じゃあ、どれにするの?」
ここにあるのは黒、カーキ、茶色、紺だけだった。もっとあっただろうけど、売れてしまったみたいだ。
「どうしよっかなー」
「今のとは違う方がいいんじゃない?」
「やっぱそうだよなー。ナツはどれがいいと思う?」
軽く意見を出したら、今度は旬君から意見を求められた。
「んー……」
考えてみても分からないから、あたしはダウンを一着ずつ取って、旬君に合わせてみ
る。
黒……は、似合わないことはないけど、今からの時期に着るんだったらちょっと重たいかなぁ。
茶色……は、ダメだ。この色は、明るすぎるし、旬君の髪の色とも合わない。
紺……は、あ、結構いいかも。寒々しいかとも思ったけど、意外とそうでもない。茶色い髪の色にも不自然なことはないし、何にでも合わせられそうだ。
「紺かなぁ……」
この中では紺が一番いい。それがあたしの感想だ。
「じゃあ、紺にする」
一瞬で返事が返ってきた。
「えっ…いいの?」
決断の早さにあたしは驚いた。
選んどいてなんだけど、本当にあたしが言ったのでいいんだろうか。
「うん。紺がいい」
でも、旬君は笑顔でそう言った。
「そう…?」
まぁ、本人がいいって言うならいっか。