ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~


 旬君は結局、Gパンは買わずにダウンだけ買ってもういいらしく、あたし達はお店を出た。


「ナツ、どっか飯食いに行かない?俺、腹減った」

 お店を出るなり、旬君は言った。


「そうね。もうお昼時だし」

 確かに、あたしも空いてきた。お店の中の時計を見てみると、十二時を過ぎている。いつの間にか、こんなに時間が過ぎていたみたいだ。


「どこ行く?何か食べたいのある?」


「何でもいいよ。この辺って何があるの?あたし、あんまりご飯食べには来たことないから」


「色々あるよ。歩きながら探す?」


「うん」


 当たり前のようにそう言葉を交わし、並んで歩く。


 何か、デートみたい。……て、そういえば、これってデートじゃ……


 あたしは今になって気づいた。何てことだろう。何故か今まで、そんな自覚がなかった。

 ていうか、あたしってば普通に楽しんでなかった?

 何よ、このほのぼの感は。


 でも、何ていうか、旬君って、緊張感を感じさせないっていうか、年下だからかもしれないけど、気を使わなくて済むっていうか……彼氏って感じが全くしない。


 ……あ、そうだ。旬君て、あたしの彼氏ってことになってるんだっけ……


 あたしは、またしてもそんな重大なことを忘れていた。さっきから、こんなんばっかだ。


 でも、それだけ実感がない。今、あたしの横に居るのが彼氏だなんて……


 横目で旬君のことを見ると、旬君の顔は、どこか違う方に向いている。

 何かあるのかと思って見てみると、旬君の視線の先には、ケーキバイキングのお店があった。


 もう一度旬君を見て見ると、旬君の顔は張り付いたようにお店の方に向けられたままで、歩いて通り過ぎながらも、顔だけは残ったままになっている。


 物っ凄い見てる……


 このままだと本当に首だけでも行ってしまいそうだった。

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