ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

 ふと旬君のカップに目が行った。中に入っていたのはココアだ。


「旬君、飲み物ココアにしたの?」

 ちょっと驚いてあたしはきいた。


「ケーキだったら普通コーヒーか紅茶じゃない?」


 しかも、丁度今食べてるのもチョコレートケーキ……甘過ぎじゃないだろうか。


「俺、ココア好きだから。ケーキの時でも普通にこれだよ」


 旬君はなんてこともないというように言ってのけた。


 まさか、そこまで甘いもの好きだったなんて……


「それに俺、紅茶はともかくコーヒーは飲めねぇの」

 旬君はせっせとケーキを食べながらそう続ける。


「そうなの?苦いからダメとか?」


「それもあるけど、飲んだら腹壊すから。多分、合わねぇんだな。飲むんなら、砂糖三つと半分以上牛乳入れないと無理」


「えー?そんなのもうコーヒーじゃないよ」

 旬君の言う味を想像してみて、あたしは笑った。

 多分それはカフェオレにもならない、コーヒー味の甘い牛乳だ。


「本当に甘いの好きなんだ。珍しいね。男の子でそんなに甘いもの好きって」


 あたしの周りの男には、いや、女の子にだってこんなに甘いもの好きな人はいなかった。特に男は、苦手な方が多い。そうじゃなくても、食べれるけど好きじゃないとか、そんな人ばかりのイメージだ。


「みたいだよな。俺の周りも嫌いなヤツ多くてさぁ。男同士ではこういうとこってめったに来れねぇし、今めちゃくちゃ嬉しいんだ」

 本当に嬉しいということが、顔だけでなく雰囲気でも十分伝わってくる。


「そっかぁ」


 旬君って、分かりやすい。そう思った。


「でも、そんなに甘いのばっかりだったら体に悪くない?」

 旬君のこの食べ具合を見ていたら、糖尿病とか(それはまだ若いから大丈夫だろうけど)具合が悪くなりそうだ。


「全然!それよく言われるけど、俺、虫歯ですら一回もなったことねぇの。病気も全然したことねぇし」

 旬君は少し自慢気にそう言った。


「へぇ……すごいね」

 若いからなのか、そういう体質なのか、とりあえず、そういうことで痛い目を見たことがないから、旬君の甘いもの好きに拍車がかかったのかもしれない。

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