ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「でも次はメシ系取ってこよっかな。ナツは何のヤツ食べてんの?」
いつの間にか、あんなにあった旬君のケーキは、もう残り一つになっていた。
あんなに食べて、まだ食べるんだ。
「カルボナーラと……パスタは他にも色々あったよ。それと、ハムサンド」
あたしは、自分の取ってきたものを答えた。
「ハムサンド? いいなっ。俺ハム好きなんだ。あとで取りに行こっ」
旬君はまた嬉しそうに言って、お皿の上のケーキをフォークで刺した。
そんな嬉しそうなところで、言いにくいけど……
「サンドイッチはなくなってたよ。あたしが取ったのが最後だったから。また違うのに変わってたよ」
ここのバイキングは、品切れになっても続けて同じものは並ばない。丁度あたしが取った後に、確かサラダサンドに変わっていた。
「えっ!?」
そのリアクションだけで、旬君の心情が分かる。
ハムサンド一つで物凄く落ち込んでる。
たかがハムサンド、されどハムサンド。旬君にとってはそうなのだろう。
「……はい」
あたしは、旬君のお皿の上に、ハムサンドを置いた。
「え……」
旬君は目を丸くして、ハムサンドとあたしを交互に見比べた。
「旬君、食べていいよ。あたし、また他の取ってくるから」
「いいの?」
「うん。好きなんでしょ?」
そう言うと、旬君の表情は再び明るくなった。
「ナツ、ありがと! ……いただきまーす!」
旬君は、どこにでもあるような、正直、コンビニにあるのとそんなに変わらないそのサンドイッチを、嬉しそうにとても美味しそうに食べていた。
多分あたしは、旬君のその表情を見たくて、旬君にハムサンドをあげたんだと思う。