ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
 そしてあたし達は、ケーキを食べながら、雑談をした。


「ナツは食べもんで何が好き?」


「んー……特にこれが好きっていうのはないかなぁ。その時の気分で変わるから……あっさり系が食べたい時は和食だし、こってりしたのが食べたい時は中華とか……」


「へー。俺はこってり系が好き。腹減ってたら豚骨ラーメンとか、食べたくなる」


「ああ、お腹空いてたらなるよね。でも、あたしは豚骨より醤油かな」


 何でか知らないけど、食べ物の話だけだった。

 初デートで、こんなに砕けた話をしたのは初めてだ。

 でも、楽しかった。


 今までの彼氏との初デートは、どこか緊張して、控えめにしていた。少なくとも、いきなりラーメンとか焼き肉の話にはならなかったし、できなかったと思う。


 でも今、旬君には包み隠したりすることなく、話している。

 多分、旬君の雰囲気が、そうさせるんだと思う。



 いきなり、携帯の着メロが聞こえた。


「あ…俺だ」

 旬君がすぐに反応して、携帯を取り出した。

 ほんの少し不機嫌そうにしながら、着信を確認している。


「ごめん、出ていい?バイト先の先輩からなんだ」

 申し訳なさそうに旬君が聞いてきた。


「うん」

 バイトの先輩……それなら出ないとしょうがない。あたしは頷いた。


「ごめんな」

 もう一度謝ると、旬君は電話に出た。


「もしもし?……………………えっ!?」

 電話の向こうの言葉を聞いてか、旬君がいきなり大きな声を出して、あたしは驚いた。


「………………そんな……先輩! 俺だって無理っすよ!」

 旬君は物凄く必死な様子でそう言っている。


 何かあったのかな……そう思いながら、見ていると、旬君は黙り込んでしまった。


「……………ちょっと……待っ……」

 やっと出た言葉がそんな感じで、多分、相手側に無理矢理電話を切られてしまったのだろう。


 旬君は呆然として、携帯を見つめ、何か考えているようだった。

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