ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
卒業の日
「沖田。お前、本当にそれでいいのか?」
俺の目の前で、深刻な顔をしている担任。いや、正確には元担任。
「はい。俺的には特に問題ないです。ていうか、むしろこうじゃないと嫌なんで」
元担任の深刻な顔とは逆に、俺はいつもの調子でそう答える。
「だがなぁ、やっぱり専門学校に行った方がいいんじゃないか? 今ならまだ間に合うし……」
今日は、高校の卒業式の日だ。
といっても、式は一時間前に終わって、最後のHRもあっという間に済んだ。
他の奴らは解放感に浸っているのに、俺だけ呼び出しをくらってしまった。もう卒業したってのに。
呼び出されたのは、進路の話で、だ。
昨日、卒業式の事前指導で久々に学校に行った俺は、担任に専門学校には行かないで働くということを口で伝えた。
その時の焦りようといったらむしろ笑えるぐらいで、放課後に残れと言われたのを、俺は面倒臭くて忘れてしまい、帰ってしまった。
だから今日、終わるなり職員室に連行されたというわけだ。
「だいたい、ご両親とはちゃんと話し合ったのか?」
「はい」
「……何も言われなかったのか?」
「はい」
元担任は、物凄く顔をしかめている。
でも一応嘘じゃない。
専門学校に行かないっていうのは伝えたし、渋々って感じだったけど、了承はしてくれた。だから問題ないはずだ。
「沖田。どうして今更進路変更なんだ」
元担任は真剣な顔になった。
「どうしてって……まぁ、今って就職厳しいじゃないっすか。専門行って、資格取ってもそんなに変わんないし。だからもう今のうちから働く方が得策かなーって思って」
俺は思い付いたことを適当に並べてそれっぽく言った。
何でって言われても、ナツと見合うような男になりたいから。それだけしかない。
「沖田。そう言うってことは、就職になんか当てでもあるのか?」
「え、ないっすよ。だから言ったじゃないですか。今、就職厳しいって。そんな中で当てなんてあるわけないでしょ」
速攻ではっきりそう言うと、担任の顔が引きつった。
マズいこと言ったみたいだ。