ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「あー! うまい!」
久々のビールに、声が出た。
「旬、おじさんみたい」
ナツもビールを一口飲んで、笑いながらそう言った。
「だって、楽しい時の酒って美味いじゃん。いっただっきまーす!」
俺は早速箸を持って、シソ入り餃子をつまんだ。
ポン酢とラー油をつけて口に入れた。
「……美味い! これ、すっげー美味いよ、ナツ!」
口の中に広がった味に、俺は絶賛した。
ナツの言った通りシソの味がさっぱりしていて、それでも物足りないことはない。この組み合わせは絶妙だった。
「ね。スタンダードなのと一緒だったら飽きないでしょ」
ナツも、次の餃子を焼きながら、嬉しそうに言った。
「うん! つうかこれ、ビールに合うなぁ」
俺はビールを飲み、餃子を二個目三個目と食べていった。
「やっぱりおじさんみたい」
ナツが笑って、俺も笑った。
それから、俺達は、ご飯を食べて、酒を飲みながら、色々喋ったり、テレビにつっこんで笑ったり……とにかく楽しい時間を過ごした。
気がつけば、もう九時半を回っていた。
「なぁ、ナツ。もう一本開けよー」
俺は、二本目の空になったビールを振って、ナツに言った。
「ダメ。未成年がそんなに飲んだら体に悪いでしょ」
ナツはそう言って、首を横に振った。
「俺、酒は結構強いから、大丈夫だって」
「そんなこと言って、酔ってるじゃない」
「ほろ酔いだからあと一本ぐらい大丈夫~」
「ダーメ」
ナツはなかなか首を縦に振ってくれない。
ていうか、かなり年下扱いされてる気分だ。
「なんだよ~。ナツは居酒屋で悪酔いするくらい飲むくせに」
ちょっといじけて俺はあの日のことを口にした。
「なっ……何言って……」
「あの時さぁー……俺、本当は十時上がりだったのに、閉店までいることになっちゃったし」
本当はそれほど気にしてない。
あの日の分は、店長が給料に上乗せしてくれたし、それに何よりも、ナツに出会うことができたから。