ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「流されるあたしが悪いのは分かってるけど……なんか、ここまでくると男運ないのかなーって思っちゃう」


 ナツは笑ってはいるけど、何だか、寂しそうだった。


 俺は、ゆっくりとナツに手を伸ばして、ナツの体を引き寄せた。

 そして、腕の中にナツを収めて、ぎゅうっと抱き締めた。


「え……」

 腕の中で、ナツは驚いたような声をあげた。


「旬……どうしたの? いきなり……」


「ぎゅーってしたくなったから。ナツのこと」


 どうしてかと聞かれたら、ナツのことが愛しくなったから。

 それだけだった。


 愛しいって言葉の意味が、初めてちゃんと分かった気がする。


 今、俺の腕の中にいるナツみたいに、温かくて、柔らかくて、優しくて、とても心地いいものなんだ。


 俺達の出会い方も、普通じゃない。付き合い方だって俺の方から言って、ナツは流されただけだったのかもしれない。


 でも、俺はそれを後悔させないよ。

 絶対にナツを悲しませたりなんかしない。


 俺は抱き締めていた腕を緩めて、ナツの髪を触った。

 サラサラしてて、気持ちいい。


「ふふっ……くすぐったいよ」

 ナツの首に指が触れた途端、ナツは首を縮めて笑った。


「ナツ、首弱い?」


「旬の触り方がくすぐったいの」


 ナツが俺を見上げた。

 思った以上にナツの顔が俺の顔の近くにあった。


 俺が頬に触れる、ナツは恥ずかしそうに目を伏せた。


「ナツ……好きだよ」


 そして、俺達は、恋人になって初めてのキスをした。


< 97 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop