美加、時空を越えて
美加(ああそういえば、わがままばかり言ってたな。
前の私。
私は自分の事ばっかりで、守から「相談がある」って言われても
「男でしょ。
自分で解決してよ」
って聞こうともしなかったし……。
今度はちゃんと守の相談を聞いてあげよう)

守「火曜日なら 会社を定時で帰れるんです。
6時に待ち合わせしませんか?」

美加、にっこり微笑みながら、
「私でよければ」

守「よかった。美加だとこうはいかないな」

美加は、守がボ-ルを持つ手を見つめた。
(あの大きな手が好きだった。
大きくて、でも指は細く長い。
いつも感心してた。
なんて男性なのに綺麗な手なんだろうって)

守が、ストライクを決めて
「やった」というように手を上に上げる。

美加(子供みたいで可愛い)
美加の方へ戻ってくる。
美加の手の平を「パン」と叩く。
そんな些細な事が美加には、たまらなく嬉しかった。

瞳はずっとストライクのようだ。
歓声が美加の所まで聞こえてくる。
島美加は同じレーンになった光に、手取り足取りボーリングを教わっている。

(楽しい一日だわ)

守からジュースを手渡されながら 
美加は自分ではとびきりの笑顔を返した。
つい守を じっと見つめている美加がいた。
視線に気付き、守が笑顔を向けてくれる。
美加(嬉しい。何から何までこんなに嬉しいなんて、世界がばら色に輝いて見えるわ)
身体の中の奥深い部分が熱い。
トクトクと恐ろしいほどの速度でなる胸の鼓動は止められない。
思いは勝手にふくらむ。
守のテノールの声が、美加の鼓膜を震わす。
瞼を閉じてその声をひそかに味わっている美加がいた。
美加の瞳には、守しか映っていない。









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