美加、時空を越えて

瞳は、学者の事故があった日の前の夜に学者からメ－ルが来ていた事を思い出していた。
そのメ－ルにはこうあった。

瞳君、明日がいよいよ決行日だ。
僕は、今日妻と話をした。
僕が未来から来た僕だと言うことも含めて、僕の思いを打ち明けた。
「あんな奴（過去の僕の事だが）でいいのか？
僕の方が君を幸せに出来る、僕の方が君に対して優しいし思いやりもある。
奴では無く、僕を選ぶ気持ちは無いのか？」
そうしたら　妻は、何と言ったと思う？
『私はあの人でいいの。
未来の貴方から見れば　どうしようもない奴としか見えないかもしれないけど。
私が愛しているのは　欠点も含めたあの人なのよ』
と、言ったんだ。
妻は僕の全てを許していた。
僕が過去の僕自身を許せなかっただけで……。
この言葉を聴いて僕は救われた。
もう思い残すことは何も無い。
明日は、当初の予定とおり　僕が死に、妻と過去の僕は生きるだろう。
瞳君、愛とは、コインの表と裏だね。
憎しみとか不安が裏で　愛が表だよ。
他人への（僕は過去の自分だったが）憎しみは　自分への愛でもある。
今までありがとう。
君達には色々と迷惑をかけてしまい、すまないと思っている。
今の僕は、皆への感謝の気持ちだけだ。
こんな気持ちで、死ぬことが出来るなんて思っていなかった。
本当にありがとう。