美加、時空を越えて
武将   「そのほう、何者だ。 
      敵か、味方か」

武将が自信と威厳に満ちた大声で聞く。

美加は武将の前にひざまずき、下を向き答えた。

「恐れながら申し上げます。
私は味方でございます。
今、こうしている間に今川の兵は、城へ向かっております。
殿からの御命令をお伝えします。
『この場よりも 城に向かい敵に攻めさせぬ方が、有利かと伝えよ』」

武将は美加を見下ろしながら、少しも動かずに言う。

武将「ふんっ。
小賢しいわ。
父上の命令だと。
わしに退却しろと。
この状況は有利である。
皆殺しにしても良かろうに
まあここは父上の顔を立てておいた方が得策かもな」

美加は、下を向いたまま 遠慮がちに言う。

美加「『無駄な殺生は慎むように』ともおっしゃっておりました。
それと『人質は丁寧に扱うように』と」

武将がぎろりと目をむき、怒り出した。
刀を持った手を上に振り上げると、人を切るように刀を下へ下げた。

武将「ええぃ、だまれっ。
貴様、誰に対して物を言っておる。
人質をこれへ」

小さな子供が2人、よろけながら家来により連れて来られる。

武将が口元に薄笑みを浮かべながら言う。
「この場で即刻、その2人の首をはねよ。
道中 襲われたといえば、誰もわかるまいて。
敵の身内を生かしておけば、将来わしを仇と思うかもしれぬ」
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