美加、時空を越えて
光は、こめかみに指先をあてて軽く眉をひそめた。
「もう済んだ事じゃないか」
時空の扉の中は危険だ。
無事に帰れる保障はどこにもない。

僕は、100年前のように、傷ついて帰ってくる美加をもう見たくはない。
あの時はあのまま死んでしまっても
おかしくないほど傷だらけだったんだぞ。

又、あんな無茶をしたら今度こそ
本当に死んでしまうかもしれない。

美加が傷つくのを見たくない人が
どれほどいるか考えた事があるのか」

光の手が思わず、美加の腕を掴む。

美加は、乱暴にその手を振り払った。

「私の意志は固いの。
誰がなんと言っても私は守を死なせはしない」

「守君に会えたとして命を救えたと
仮定しても次の日には違う事故でやはり死ぬかもしれない。
その時美加はどうするんだ?
人が死ぬのを食い止めるなんて事は出来ないんだ」

美加は、優しく、けれどきっぱりと言い切った。
「私は ただ守に一目逢いたいだけ……。
……守には生きていて欲しい……。
……守の命を救える可能性が1%でも残っているならば、
私はそれにかけてみたいの」
 
光がため息まじりに言う。

「これ以上、何を言っても決心は変わらないのか?」  

美加が強い口調で、真っ直ぐ前を向いたまま言う。 
「もう、私についてこないで。
私の事をずっと思っていてくれてありがとう。
光の事は大好きだったよ。
私は、帰ってくるから、心配しないで」

美加の無情な台詞を聞き、光はがっくりとうなだれる。
これ以上の言葉は思いつきそうになかった。
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