パラドックスガール
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「茗子。」


生徒玄関。
掃除をすませて下駄箱からローファーを取り出していると、玄関外から名前を呼ばれた。
そちらを向くと、バックの夕日が痛いほど視界をいっぱいにした。
眩しくて目を細めながら相手を確認すると、ほほ笑む玲央がいた。


「…玲央、本当に待ってたんだ。」


ローファーを下に放り、傾いた片方を足で整えてから履く。


「言ったでしょ、待ってるって。」


少しムッとした感じで言われた。
せっかく笑顔だったのに、勿体ない。

そんなことを考えながら視線を下に向けると、玄関付近に駐車された自転車のシルエットが目に入った。
帰宅準備万端。用意周到だと思う。


「待たせてごめん。帰ろ。」


「楽器屋。」


「わかってる。ちゃんとつきあうよ。」


あたしは玲央の脇をスルリとすり抜け、カバンを抱えて自転車の荷台に後ろ向きに座った。




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