パラドックスガール
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足には少し自信があるのに。


「茗子!」


掴まれたあたしの手首。
あっさりと捕まってしまった。
今の地点、裏庭。
あたし何気に頑張ったなぁ。
やはりコンパスの差なのかと思ったりするが、あまり気を紛らわせなかった。


「…茗子、どうしたの。
なんで泣きそうな顔してるの」


息を整えながら、同じ目線の高さで尋ねてくる玲央。
あたしはなんとか目を合わさないようにし、うつ向く。
そんなあたしに、玲央はため息を一つ吐いた。


「…茗子、こっち」


そう言いながらあたしの手を引く。
あたしは抵抗することなく、引かれるまま足を運んだ。
裏庭の一角、放課後でも日が当たる芝。
そこにあたしを座らせ、背中合わせになるように玲央も座った。


「…何」


意図が読めないあたしはそれだけ呟く。
すると、背中にかかる体重が重くなった。


「ちょ…」


「これで見えないでしょ?」



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