パラドックスガール
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「…」


「木下さんは僕がほしいかもしれない。
でも僕がほしいのは君じゃない、ただそれだけのことだよ。」


「っ、それでも人の心は変わるわ!
そばにいたらきっと―」


「無理だよ。」


即座に拒絶する。


「…さっきの、貼り付けただけの嘘の笑顔にときめくような人、いらないから。」


言葉を失い僕の腕を掴む手の力が抜けたのを感じた。
腕を少し振ると呆気なく離れる木下さんの手。
僕は何も言わずその場から離れた。



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