パラドックスガール
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「……いいんだよ、お前が茗子のいいとこ知らなくても。
茗子は僕の。」


また前を向き、足を運びながら圭吾に言う。
言い終わって目を閉じた。




それはただの願い事。
そうあってくれるように、自分が彼女でいっぱいであるように、彼女が僕でいっぱいであるように、ただ願うだけ。






「玲央」


名前を呼ばれて、僕は目を開けた。
目の前に、僕より小さい彼女が不思議そうに僕を見てた。


「遅いから探しにいこうと思ってたの。
そしたら玲央と圭吾君見えたから。
…どうしたの?頭痛い?」


心配そうに僕の右手に触れる彼女。
心臓が一拍だけ、大きく脈打った。


そんな簡単に触れないで。
手を伸ばして、腕に閉じ込めたくなる。
「僕のものだ」と、主張したくなる。



「大丈夫だよ。ありがと茗子」


触れた手を握り返す。
「そっか」と安堵した彼女を見て、顔が緩むのがわかった。



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