パラドックスガール
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「そういえば圭吾君はどうしたの?
一緒に帰るとか?」


不思議そうに今度は圭吾を見る茗子。


「ん?俺は」


「違うよ茗子。圭吾は見送りに来ただけ。
圭吾、先生に呼ばれてたんだっけ?」


僕は無理矢理話に割り込んで言い、圭吾に目をやる。
少し圭吾の顔がひくついたのが見てわかった。


「え、そうなの?」


「んー……まぁそういうことにしといてあげるよ。
愛しの毒林檎姫のために。」


そう言って圭吾は僕の左手を掬い唇を寄せる。
嫌嫌ながら、僕はそれを受け入れた。
我が儘を受け入れてくれたお礼も含めて。


「じゃあね茗子ちゃん。ばいばい玲央」


意地悪そうな笑顔を残して、圭吾は階段を降りていった。




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