穢れなき雪の下で
「ちょっと、イチロー、どうしようーっ」

そろそろ退社しようかなと思った19時少し前。

いきなり携帯電話が鳴って、出るやいなや受話器の向こうでミユが喚いた。

「……今度は何?」

そりゃもう、どうかしたんだろう。
彼女は用事がなければ絶対に俺の電話にはかけてこない。

「彼氏が用が出来たってー。
 ねぇ、その日クリスマスイブなんだよ。
 折角私がレストラン予約してあげてたのにひどくない?
 仕事と私とどっちが大事? なんて野暮なこと聞く気はないけどさぁ、ねぇ。
 どう思う?」


いきなり、久々に電話をしてきて、前置きもおかずにこれだ。
俺は、悩み相談センターのお兄さんじゃねーぞ。
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