穢れなき雪の下で
でも、今の俺はずるくて優しいから、そんな本音は口にしない。


学生時代だったら間違いなくすぐにそう言っただろうけれど。

「遊ばれてるんじゃない?」

あ、まぁ、これも本音。
だいたい、ミユは彼氏の選び方がいつもおかしい。

優しくしてくれるから、とか、甘やかしてくれるから、とか、可愛いといってくれるから、とか。

暇している時に現れた好みの男だったから、とか。


そういう理由で彼氏を作るんだから、遊ばれるのもいたしかたないと、俺は毎回思っている。

もちろん、本人にもちゃんと伝えているのだが、聞く耳を持たない。
なにせ、自分がそういう理由で彼氏を作っているという自覚がないのだから仕方がないのかもしれないが。


あるいは、血筋のせいなのか--


こみあげてきた苦く暗い記憶は、彼女の声にかきけされた。

「すーぐそうやっていじわるばっかり言うんだから。
 もう、イチローなんかに電話しなけりゃ良かった」

きっと受話器の向こうではいつものように頬を膨らませて、上目遣いですねているんだろう。
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