穢れなき雪の下で
「じゃあ、なんで俺に電話したの」

「だって、クリスマスに空いてそうな人ってイチローのほかに知らないんだもんっ」

――ほらね。

俺は思わず吹き出しそうになる。


どうして、ミユと、それ以外の女たちの俺に対する評価はいつも正反対になるんだろうか。

そして、大抵の場合、ミユに判断が当たっている。
もっとも、彼女はもう長い間一番大切なことを見落としてくれてはいるけれど。

「おごってくれるの?」

他の男とディナーを食べるはずだった、そのレストランに向かうのだから、そのくらいのメリットもなくほいほいついていくんじゃ、虚しすぎる。

俺の真意はきっと取り違えているのだろう。くすり、と、電話の向こうでミユが笑う。

「いいよ。
 二時間きっちり愚痴聞いてくれるなら」
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