カテキョにぞっこん!

窓の向こうから、かすかにセミの鳴き声が聞こえて……




「その問題はこっちの公式を使ってください」

「これはここに数字を入れた方が解きやすいです」

「僕が一度解いてみるので見ててください」




陽サマの声は、私の耳の奥でエコーを効かせるかように響いてくる。



ノートに書かれていく陽サマの文字は、少し斜体がかかって流れるようで。

問題を読む時の目はすごく真剣。全然やる気がないような様子なんてないの。



そこがまた素敵で……



きっと私の他にもたくさんの女の子が、私と同じような気持ちで陽サマを見てるんだろうな。

何人の子を教えてるんだろ。




私だけの先生だといいのに……





「由利さん、聞いてますか」


「ふぇっ!はっ……はい……」




い、今……呼んだよ?
陽サマが、私の名前を呼んだよ?
うううううっ……!!




無意識に足をバタバタさせる私。


私に「さん」なんて付けなくていいってば!由利って呼んでぇぇ!





< 14 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop