カテキョにぞっこん!
窓の向こうから、かすかにセミの鳴き声が聞こえて……
「その問題はこっちの公式を使ってください」
「これはここに数字を入れた方が解きやすいです」
「僕が一度解いてみるので見ててください」
陽サマの声は、私の耳の奥でエコーを効かせるかように響いてくる。
ノートに書かれていく陽サマの文字は、少し斜体がかかって流れるようで。
問題を読む時の目はすごく真剣。全然やる気がないような様子なんてないの。
そこがまた素敵で……
きっと私の他にもたくさんの女の子が、私と同じような気持ちで陽サマを見てるんだろうな。
何人の子を教えてるんだろ。
私だけの先生だといいのに……
「由利さん、聞いてますか」
「ふぇっ!はっ……はい……」
い、今……呼んだよ?
陽サマが、私の名前を呼んだよ?
うううううっ……!!
無意識に足をバタバタさせる私。
私に「さん」なんて付けなくていいってば!由利って呼んでぇぇ!