カテキョにぞっこん!


時計の針が、そろそろお昼前を差す時間になっていた。



《心頭を滅却すれば火もまた涼し》という言葉は正しかったことが、今私の体を持って証明されている。


勉強に集中したからなのか、陽サマに集中したからなのかは決めかねるけど、

陽サマとの2時間、私はほとんど暑さを忘れていた。





「時間ですね。それでは今日は終わりましょう」



陽サマが自分の筆箱やノートを鞄に片付ける。



「ああっ、先生!あのっ……
先生が解いてくれた問題を参考にしたいので……その……だからノートに書いてあった……あれを……」



陽サマは、自分が問題を解く時は全て自分のノートに書いていた。母が用意したメモ帳も、ほとんど使っていなかったのだ。



「……あぁ、さっきのですね」




そう言うと陽サマは、また鞄から自分のノートを取り出して、カッターを使って丁寧にそのページを切り取ってくれた。



「どうぞ」


「ありがとうございます!」





この時の私は、まるでアイドルにサインでももらったかのようなくらい、舞い上がり興奮していた。


一瞬頭の中で、ちょうどいいサイズの額が家になかったか考えたくらいだ。



< 15 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop