カテキョにぞっこん!
時計の針が、そろそろお昼前を差す時間になっていた。
《心頭を滅却すれば火もまた涼し》という言葉は正しかったことが、今私の体を持って証明されている。
勉強に集中したからなのか、陽サマに集中したからなのかは決めかねるけど、
陽サマとの2時間、私はほとんど暑さを忘れていた。
「時間ですね。それでは今日は終わりましょう」
陽サマが自分の筆箱やノートを鞄に片付ける。
「ああっ、先生!あのっ……
先生が解いてくれた問題を参考にしたいので……その……だからノートに書いてあった……あれを……」
陽サマは、自分が問題を解く時は全て自分のノートに書いていた。母が用意したメモ帳も、ほとんど使っていなかったのだ。
「……あぁ、さっきのですね」
そう言うと陽サマは、また鞄から自分のノートを取り出して、カッターを使って丁寧にそのページを切り取ってくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます!」
この時の私は、まるでアイドルにサインでももらったかのようなくらい、舞い上がり興奮していた。
一瞬頭の中で、ちょうどいいサイズの額が家になかったか考えたくらいだ。