カテキョにぞっこん!
とにかく今の私には、陽サマはテレビの中のアイドルなんかよりもアイドルだった。
「ねぇねぇ、だから由利は陽サマのこと好きってことでしょ?」
駅近くのファーストフード店で、香奈がシェイクをすすりながら身を乗り出してくる。
「う~ん、そういうんじゃないような……うん、憧れの人かな。もうかなり輝いてる人。私みたいな中学生が、好きになっていい相手ではないって感じかなぁ」
私も負けじとチョコレートシェイクをすすり込んだ。
陽サマの存在は、
私にとって本当に大きい。
届かないのが目に見えてるから、無理に手を伸ばそうともしないっていうか……
「変なのぉ。だって同じ人間なんだし、ほんの4つ年上なだけでしょ?そこまで遠慮することもないと思うけどねぇ」
「だからぁ~、違うんだよぉ」
とにかくいちいち興奮しちゃうし。
好きとかいう気持ちを感じてる余裕もなくて。
今のままでも、陽サマとの時間はすごく嬉しくてワクワクできるから。
ひとつひとつの陽サマの仕草ではしゃげるんだもん。
好きになってしまったら、もっといろんな陽サマを見たくなって。
贅沢を言ったら、こんな毎日だって消えちゃうかもしれないから。
私は今みたいな感じでも十分。
本当に好きになってしまいそうな気持ちに反して、私の心は知らずのうちにブレーキをかけていた。
陽サマはカッコイイし、一緒にいるとドキドキしっぱなし。
でも、
好きになっちゃダメだよ
ってオーラに、陽サマはいっぱい包まれてる気がしたんだ。