カテキョにぞっこん!
落とされる
憧れの人でいいんだもん!
言い聞かせるように、私は毎回陽サマの隣に座りながら、ドキドキできる胸のときめきを楽しんでいた。
テレビに出ている俳優に見とれるのと同じ。すぐ隣にいるけど、
陽サマは『陽サマ』なのだ。
『好きな人』でも、もちろん『彼氏にしたい人』でもない。
とても高い、雲の上の存在。
まぁ、ちょっとくらいは
生徒が私一人だと良いな、とか
私より仲のいい生徒がいたら嫌だな
とかは思ったりもするけど
どうせ私なんかが、陽サマを独り占めできるわけはなくて。
だから私の中で、陽サマがいるその位置が、変わることなんてない……
と、思っていたんだけど。
いつものように、私の隣で静かな呼吸を繰り返している陽サマ。
でも今日は
なんだかいつもと違う。
やたらと時間を気にしている様子が、なんとなくわかるのだ。
腕の時計を眺めたり、窓の外をうかがったり。
私との勉強が終わったら、
どこかへ出かけるのかな……