カテキョにぞっこん!
「だけどさ~、由利がそこまで言う陽サマって、そんなに素敵なの?
一度会ってみたいよねぇ。
そうだ!雰囲気的にどんな感じか、そこら辺歩いてる人で教えてよ」
香奈がむちゃくちゃなことを言い出した。
そんなことを言われても、陽サマの見た目はかなりのものだ。
そうそう当てはまるような人は歩いていない。
「う〜ん。そんな人いないよぉ。実物見にくればいいじゃ……」
景色が一瞬止まったように感じた。
……あれ?
似てる。
「え?何?由利の家に見に行っていいの?やったー!じゃあさ、今度来る日教えてよ。……ねぇ、由利!ちょっと聞いてんの!?」
メガネかけてないけど、
あれは陽サマだ……。
オープンテラスの喫茶店で、髪の長い綺麗な人と向かい合って。
あれが彼女なんだろうか……
そこにいるのは、
いつもとは違う陽サマ。
コーヒーを飲む仕草とか、彼女を見る瞳とか。
彼女を覗き込む様子とか、彼女の髪に触れる指先とか……っ
私は思わず目を閉じた。
そこには……私の知らない陽サマが、いっぱい……
「えっ?ちょっと由利!」
気が付いたら走り出していた私。
どうして泣く必要があるんだろう。
今知ったわけじゃないのに……無理なことなんて、わかってたのに。
それくらい子供だってことだよね。
どうせ上手くなんていかないことが分かってるから、悔しくて冷たく当たって。
自分の思い通りじゃなかったら、
目を背けて……
「ただいま。
お母さん……
私、家庭教師やめたい」
ほら、こうやって
逃げることしかできない……。