カテキョにぞっこん!
私の話を聞くと、母は少し残念そうな顔をした。
「夏休み明けの定期テストの結果も上がってたのに……どうしちゃったの?もしかして!
畑倉先生に何かされたの!?」
「そ、そんなわけない!
先生はすごく……いい人だもん!」
ホッと胸を撫で下ろし、ソファーにもたれた私の隣に座る母。
「お母さんも、そう思ってるわよ」
我慢していたのにまた涙が出て……
私は黙って頷いた。
母親とは鋭いもので……
なにも言わなくても、たぶん私の気持ちはわかったんだろう。
「どうせ期限の3ヶ月までは後しばらくなのに。
本当にやめていいの?」
「えっ?3ヶ月?」
「なぁに?もしかして最初の時の話、全然聞いてなかったの?」
聞いてなかった……
ただひたすら、陽サマに見とれていたことしか覚えていない。
「本当は男の人が女の子を受け持つことって少ないみたいよ?あえて外すんですって」
母が私にコーヒーを入れてくれる。
あの喫茶店での風景が思い出されて、ほんのちょっと切なくなったりもするんだけど。
「どうして?どうして女の子を受け持つのがダメなの?」
「ダメではないんだけど……いろいろ決まりが増えるみたいよ。ドアは開けておくとか、体はもちろん手にも触れてはいけないとか。
まぁ、そこらへんは分からなくもないけど。
あまり長い期間一緒にいると、問題も起こりやすいんですって。難しいからね、年頃の女の子は」
私はまるでその典型的対象になったように、陽サマに恋しちゃったってわけだ。
「じゃあどうして私は?なんで先生は、私を受け入れたんだろ。お母さんは、どうしてそれでも私を畑倉先生に預けたの?」
問題なんて起こらなかったけど、私は本来受け入れられるべきではない感情を持ってしまった。
好きに……なってしまった。
フフッ……
母がクスクスと急に笑い出した。
「なっ、なによ!」