カテキョにぞっこん!
私が顔をしかめると、母は笑うのをやめて最初に交わした契約書の封筒をもってきた。
「畑倉先生にね、これを見せたの」
「ちょっ……!やめてよ!」
それは私が香奈と二人でふざけて撮った、バカみたいな写真で。
とても男の人に見せるようなものではない。
「これ見てなんて言ったと思う?
こんな子なら、男だとか女だとか、そんな雰囲気も吹き飛ばしてくれそうだって。
元気をもらえそうだって……そう言ってたわ」
母はまた少し笑って、その書類を片付けた。
「あの子、ツンとした感じだけど、本当はとてもいい子だと思うのよ。言葉も足りないし愛想するのも下手だけど、
お母さんそう思ったから、あなたのこと頼んだのよ」
お母さんは、
さすが私のお母さんだね。
私も知ってるの。
陽サマはすごくいい人。
私が好きになったのがダメなだけ。
「本当に……断っていいの?」
少し考えて、私は小さく頷いた。
いい人の陽サマに、やっぱり迷惑はかけたくない。
困らせることは
……もうしたくないから。
電話をかける母の横で、私は静かに座っていた。
陽サマは、もうしばらくだから最後までやらせてほしいって言ってたみたいだけど
振り返った母に
私は首を横に振った。
諦めようって決めたから。
ちゃんと忘れたいって思ったから。
このまま会い続けたら、もっともっと陽サマにドキドキして、ときめいて、惹かれて。
好きが止まらなくなる。
「はい、わかりました。急で本当にすみません。よろしくおねがいします」
今ならまだ……止められるの。
「来週最後に一度だけ来るって。まとめと……挨拶もちゃんと済ませたいからって」
「うん……」
私は涙を拭った。