カテキョにぞっこん!
まだ鞄も降ろさず、椅子にも座っていない私に、それを待てない母は勝手に話を始めた。
「由利も受験生になったんだし、もっと真剣に勉強のこと考えないといけないでしょ?お母さんね、チラシに入ってた家庭教師派遣センターに電話したのよ」
なんて勝手なことを……
受験生とは言っても、私には有名校を狙えるような、たいした頭があるわけではなかった。
高校なんて、適当にそこそこの場所に入れたらそれでいい。
しかも中学最後の夏休み。
今日だって早速プールへ泳ぎに行く約束をしているのだ。
勉強の話題は勘弁してほしい。
手招きされ、
私は半分呆れて母の隣に座った。
目の前に座るお客サマの足下に目をやり、そこからゆっくりと視線を上げていく。
つまり、この人が私の
家庭教師になるってわけ……?
覚えの悪い私に教えるんだもん。相当我慢強い人じゃないと相手にはできないよ?
私は、さっきまで後ろ姿しか知らなかったその家庭教師を
今度は真正面から眺めた。
な、ななっ……なに!?
この、めっちゃイケてる兄さんは!
思わず視線釘付けになる、その家庭教師の容姿に、
私の心は、完全に射ぬかれた。