カテキョにぞっこん!
揺れる
夏の名残のような積乱雲が、朝から空を覆っていた。
「そろそろ台風だもんね。今日は荒れるらしいよ?」
風に髪を乱しながら、香奈は私を盾にして歩いていた。
「今日……最後なんだぁ」
私が突風も気にせず顔を上げて呟くと、香奈は異様なものを見るかのように私を眺めてきた。
「あぁ、陽サマね。こんな嵐でも来るの?」
「カテキョに天気は関係ないでしょ」
心ここにあらずで返す私に、香奈は少し呆れているようだった。
「気持ちだけでも伝えとかないと。後で後悔するんじゃないのぉ?」
窓がガタガタ音をたてて、窓の外もいつもよりずっと暗くなっていた。
陽サマはいつも歩いてやって来る。
雨が降り出しませんように。風で飛ばされて怪我をしませんように。
そんなことを祈りながら、ただ陽サマの押すインターホンの音を待つ。
ピカッ!
一瞬光ったと思った瞬間
ドドーーーン!バリバリッ!
「ひゃっ!!」
空に大きな音が鳴り響き、私は思わず机に突っ伏した。
私は、雷が大の苦手だ。
そうこうしているうちに、今度は
ポツッ、ポツッ……
ザ、ザザーーーーーーーー
ついに雨が降り出してしまった。それと同時に聞こえる、インターホンの音。
陽サマ!
雨に濡れず
なんとか間に合ったならいいけど……