カテキョにぞっこん!
まだ鳴り止まない風と雷。
窓ガラスに映る私と陽サマはすぐ重なるのに、
現実にそうなることは
とても難しくて。
「では続きをやります」
さて、と雰囲気を戻すように机の方へ向き直る陽サマ。
私もちゃんと最後までやらなきゃと、涙を拭く。
「私が泣くなんておかしいかったです。ごめんなさい」
私は気持ちを落ち着かせてから静かに話した。
すると陽サマは
「素直に気持ちを出せるのはうらやましいです」
そう言って
にっこり笑ってくれた。
のどの奥から、ドクンッと体中にしびれが走る。
好き……好き……大好き。
私はこんなに陽サマの良いところを知ってるのに……
隣には並べないの?
バタバタ……
階段の方から聞こえて来たのは、慌てて走るスリッパの足音。
そして間もなく、部屋の入り口から母が姿を見せる。
「由利!今おばあちゃんから電話があったんだけど、おじいちゃんが風に押されて自転車で怪我したって言うのよ。駅までタクシーで行って、お父さんと合流してから病院に向かうから。留守番よろしくね」
えっ……ちょっと怪我って
……大丈夫なの!?
「私も行かなくていいの!?」
私が思わず椅子から立ち上がると、母は顔の前で自分の手の平を素早く振った。
「全然大丈夫よ!ちょっと足を打っただけみたいだし。一応病院へ行っただけだって言ってたから。様子を見に行くだけ!
畑倉先生、最後の日なのにゆっくりご挨拶もできなくてすみません。由利のことよろしくお願いします」
「……はい」
母は陽サマの返事を聞くか聞かないかのうちに、またバタバタと騒がしい音をたてて下に降りて行った。
陽サマも急な展開を理解するのに、少し時間がかかっているようだった。