カテキョにぞっこん!


それから数分もたたないうちに、家の中はシンと静まり返った。


ガタガタ…ゴォゴォ……
窓の外に吹く雨風の音が、一層強調される気がした。





「先生……私の後に誰か予定入ってますよね」


私はちらっと時計を確認した。陽サマとの約束の時間はあと15分ほどしかない。



「……はい、先日話した男の子が1人入ってます」



ってことは、
まさか駅に行ってから病院へ向かった母たちが、15分以内で帰って来るとは思えないから……

こんな恐ろしい音が鳴り響いて、暗い雲が夜空を包んでいる時に



私一人で留守番!?





想像しただけで恐怖が込み上げて来て、たぶん私は、一瞬陽サマの存在すら忘れていた。


それくらい雷は、大っ嫌いだった!







バターンッ!!



「キャーッ!!」




突然閉まった部屋の扉に、半端なく驚いた。

耳を塞ぐ腕が、ガタガタ震える。





「どこか窓が開いてますね。ちょっと見てきます」



冷静に立ち上がり、机の上にあったメガネをかけると

陽サマは部屋を出ようと扉の方へ向かった。




「ま、待って!」




思わず陽サマの服の裾を掴んでしまった私。

置いて行かれるのは怖い……





陽サマが見下ろすように私を振り返ると、今度は



「わっ!」


「ひゃっ!」




明かりが一瞬でなくなり、家中……近所中が闇に包まれた。



手放してしまった裾の感触だけが指先に残り、私はまだ慣れない視界の中を手探り状態で進む。



「先生……先生……」



不安は闇のせいでもっと膨れ上がって、涙を流す…どころじゃない。
今すぐ叫びたいくらいだった。



「せっ……」



つい大きな声で
呼びそうになった瞬間……


空気中をさまよっていた私の手が、ふいに暖かくて大きな手に包まれ


……強く握られた。





「大丈夫です。
……ここにいますから」




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