カテキョにぞっこん!
電話は母からだった。
おじいちゃんの怪我もたいしたことがなくて、今から帰って来ると言う。
私は表情でホッとしながら、心の隅では寂しい想いを募らせていた。
母たちが帰ってきたら、陽サマとはお別れだ。
「おじいちゃん大丈夫だったみたいなんで……お母さんたち今から帰ってくるみたいです」
「良かったです」
次第に静かになって行く外の様子と、冷静さを取り戻す私。
「先生。
返事だけは……聞きたいです」
陽サマの方へしっかり顔を向けて、自分の中での一番の大人な雰囲気で
まっすぐ陽サマを見つめながら
はっきり言った。
気を使われたくはない。
中学生のくせにそんな偉そうなことまで考えて
それでもとても緊張しながら、陽サマの返事を待った。
カタカタ…カタカタ……
窓が小さく揺れる。
「由利さんの気持ちはとても嬉しいです。ありがとうございます。
人は、自分にないものに惹かれます。だから、由利さんが僕を良く想ってくれたように、僕も由利さんのストレートで、素直な所には魅力を感じます。でも……」
陽サマはとても優しい人なの。
たぶん私のために、すごく言葉を選んでくれてる。
「由利さんを教え子としてとても大事に思いますし、そういうところは好きですけど。……たぶん由利さんが僕を想ってくれている感情とは違うと思います。
すみません……上手く言えてないかもしれません」
私は黙って首を横に振った。
陽サマの優しさも、私を大切に思ってくれる気持ちも
そして私のぶつけるだけの想いを、きちんと受け取ってくれてることも
十分……伝わったから。
「先生、ありがとうございました」
そう返した私は
ちょっとだけ
大人になれた自分を感じた。