カテキョにぞっこん!
玄関の扉を開けると、外からはまた、熱風が吹き込んで来た。
「では畑倉先生、来週からうちの子をよろしくお願いします」
母の丁寧な挨拶にも、陽サマは軽くおじぎをするだけで、その熱気の中を帰って行く。
私は、目の前に見える母の背中を押しのけて、靴のかかとを踏みながら表に出た。
「せっ、先生!陽先生!
これからっ……
よろしくおねがいしますっ!」
ドキドキ、ハァハァ……
たいして走っていないのに、勝手に息が荒れる。
陽サマは、ちゃんと振り向くわけでもなく、少し斜め後ろを見る程度で、また軽く頭を下げていた。
蜃気楼に揺れる、細身の体。
やばいよ!ちょ〜カッコイイよ!
私は早速香奈に知らせようと、靴を脱ぎ捨てて二階へ上がった。
電話をかけるため携帯を握り、同時に約束を思い出す。
そうだ!プールだった!
私は携帯を放り投げて、慌てて水着の準備を始めた。