花火の日
 精一杯の声でこう叫ぶみさこ。

 驚いた様子のたくや。みさこの姿を確認し、真剣な表情でペダルをこぐ。

 お互いがお互いを見つめ合える距離まで近づくと、たくやは自転車を止め、みさこに歩み寄った。

 「約束忘れてた。ごめん」

 たくやは息を整えながら、懸命にこう言った。額にはかすかな汗。
 
 
 みさこの目には、涙が溜まっている。
 
 「今から、神社に行こう」
 
 一年前のあの日と同じように、たくやはみさこを誘った。絞るような声で。

 
 みさこは涙を隠そうと下を向き、恥ずかしそうに小さく呟く。
 
 
 「うん」
 
 拭いきれないほどの大粒の涙は、ゆっくりと地面へ零れ落ちた。
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