家族の時間
和宏は川村家のインターフォンを押した。
「はい。」
麻子の声がした。
「相馬です。あかりは帰ってきましたか?」
「いいえ、和宏君一緒じゃあないの?」
麻子の問いに和宏は黙った。
「どうしたの?」
麻子は問いただした。
「…けんかしました。なかで待たして下さい。」
「どうぞ。」
麻子はインターフォンを切り、玄関のドアを開けた。
落ち着きのない和宏がそこに立っていた。


「今から行ってもいいですか?」
あかりは駅で電話をした。
「いいわよ、あかりちゃん。どうしたの?」
電話の相手、山科樹里亜(やましなじゅりあ)は聞いた。
「後でお話しします。雅也(まさなり)さんは帰ってきますか?」
「いいえ、長期出張で帰って来ないわ。渉から聞いてない?」
樹里亜と雅也は渉の同級生。
「聞いて…とりあえず伺います。」
「あかりちゃん、沙織ちゃんと翔君もいるよ。」
淳美が変わって出た。
「あつ…あつ…淳美さん〜。」
あかりは泣き始めた。
「あかりちゃん、樹里亜が迎えにいくからそこはどこ?」
あかりは居場所を淳美に言った。
「迎えに行くから待っててね。」
「わかった。」
あかりは電話を切った。
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