家族の時間

樹里亜が鞄から一枚の紙を出した。
｢あんた達、これ見なさい。｣
樹里亜が出した紙は、鑑定書だった。
｢この鑑定書、書いたのは隆文のお父さん、依頼したのは、亡くなった宏美。｣
樹里亜の言葉に和宏の両親と和宏、昌宏、あかり、沙織、愛美そして翔と拓海と樹緒だった。
｢鑑定書は誰が持っていたの？｣
麻子が聞いた。
｢私…私です。｣
淳美が手を上げた。
｢おばさん、おばさんには妹さんがいますか？｣
淳美の言葉に、和宏の母はうなづいた。
｢宏美ちゃんが、隆文のお父さんにDNA鑑定をしてもらったの。…お母さんの妹さんが七恵ちゃんのお母さんじゃあないかって。｣
｢じゃあ、なぜすぐにおしえてくれなかった？｣
和宏が淳美に聞いた。
｢和宏と昌宏が、七恵をいじめていることを宏美ちゃんは知ってた。自分がもし、いなくなった後、もっと酷くなったら出してもらうためにしたんだって。｣
渉がゆっくり言った。
｢宏美はいつも、あんた達が七恵をいじめるのを悲しんでいたの。｣
淳美は今にも泣き出しそうだった。
｢病院で、妹が出来たって喜んでいた。そんな宏美の気持ちをあんた達は打ち砕いたのよ。｣
｢あんたに、宏美の気持ちがわかるのかよ!!｣
昌宏が淳美に叫んだ。
｢わかるわけないだろ!!｣
昌宏は立ち上がった。
｢帰ろう!!｣
昌宏は出て行こうとした。
｢逃げるの？｣
樹里亜は昌宏に聞いた。
｢逃げるんだ、昌宏。｣
渉も笑いながら言った。その渉の言い方に、昌宏は走って殴ろうとした。