家族の時間
「わかるわよ!病気で入院してたんだから、どんなに不安で寂しくて、どんなに家族に悪いか…ずっと考えていたわよ。」
淳美が昌宏に向かって言った。
「七恵がいつも何も言わないから、宏美はいつも苦しんでいたわ。鑑定書を何度もあんたや和宏に見せようとしたわ。そのたびにおじさんやおばさんの自分達が説明するという言葉を信じていた。」
淳美は立ち上がった。
「隣のベッドの人間なんか関係ない。…あんた達はいつも宏美が私を紹介しようとするのを遮ったわ。」
淳美を樹里亜を抱きしめた。
「おじさんやおばさんも和宏と昌宏に事実を伝える気なんてないのに宏美が亡くなるまでずーっと話すと言って、宏美は悲しんでいるわよ。」
淳美は叫んだ。
「淳美、淳美、落ち着いて!!」
樹里亜が淳美を抱きしめた。
「おじさん、おばさん、いい加減話しをしてください。」
雅也が樹里亜と淳美のそばにきた。
「私が…私が止めていたんだ。」
健太が急に言った。
「私が、止めていたんだ。何度もチャンスがあったのを七恵ちゃんがいないのをいいことにとめたんだ。」
「なんで、父さんがとめる権利はないだろ!!」
健太の言葉に健と衛がくってかかった。
「私も止めたんだ。」
全員が声の主の方に向いた。
「お父さん!」
沙織が叫んだ。
声の主は沙織の父だった。
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