家族の時間
祖母のタキが、麻子にお茶の入った湯のみを出した。
「いつもご苦労様。」
「おばあちゃん、ありがとう。」
麻子は椅子に腰をおろした。
この朝のひとときが、麻子は大好きだった。
奥の部屋から、父親の健太(けんた)が、支度をすませて出てきた。
「健太さん、おはよう。」
「おばあちゃんおはようございます。」
「お茶どうぞ。」
タキは、健太にお茶の入った湯のみを出した。
ほのぼのした朝の時間を三人は過ごしていた。

二階から真穂と啓悟の妹、志穂(しほ)が降りてきた。
「おばさん、コーヒー下さい。」
麻子は立ち上がった。
「志穂ちゃん、牛乳は自分で冷蔵庫から出して。」
志穂はのろのろと冷蔵庫に行き、牛乳を出した。少しすると、大学生の健(たける)が降りてきた。
「おはよう。」
「健、おはよう。」
麻子は志穂のコーヒーをカップに入れながら答えた。
「ただいま〜」
渉の弟の翔(かける)が仕事の朝の仕込みを終えて帰ってきた。
「とうさん、健、志穂、これから朝食作るけど、一緒に朝ご飯食べる?」
翔は帰ってくるなり二人に聞いた。
「私はいいが、かあさんとおばあちゃんに作ってあげなさい。」
父親の言葉に、
「わかった。」
と翔は言った。
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