家族の時間

奥の和室には､真穂と鞠子と翔と親方がいた｡
｢二人とも､自分のしたい仕事なのかい?｣
親方は､寿司を出してきいた｡
｢親がどうこうで二人とも選んだのではないかい?｣
親方の言葉に二人はドキッとした｡
｢亡くなったお父さんが新聞記者だったの｡お父さんのためにって思っていたの｡｣
真穂は､ビールの入ったコップを握った｡
｢私は…両親が出版社がいいって言うから…自分の意志はなかったわ｡｣
鞠子は泣き始めた｡
｢鞠子ちゃん､回り道もいいんだよ｡｣
親方は､鞠子にティッシュを渡した｡
｢渉君もうちの淳平も回り道をしたよ｡あかりちゃんと翔は､一度戻って自分のしたい仕事についた｡｣
真穂と鞠子は親方の言葉に頷いた｡
｢少し考えてみたほうがいいよ｡｣
親方が笑いながらふたりを見た｡
｢鞠子ちゃんは､真穂ちゃんの家に泊まるんだろ?｣
真穂は頷いた｡
｢渉達呼ぶよ｡もう､家に帰りなさい｡｣
親方は､翔を見た｡
翔は立ち上がって､店の方に向かった｡
｢自分の将来だ｡二人とも親に言えるよな｡恐がらず喋りなさい｡親たちは､必ずわかってくれるから､な､大丈夫｡｣
親方の言葉に､真穂と鞠子は泣きながら頷いた｡