家族の時間
麻子が仕事に出掛ける日は、家にはタキと渉が大学時代に飼い始めたラブラドールレトリバーの栗太郎だけになった。
栗太郎は、タキの部屋の前の廊下に寝ていた。
「おはようございます。」
ヘルパーの日比野沙織(ひびのさおり)がやってきた。
沙織は、翔の彼女であかりの親友。
「おばあちゃん、おはようございます。」
「沙織ちゃん、おはよう。」タキは、椅子に座っていた。
「栗ちゃん、おはよう。」
栗太郎は尻尾をふった。
「栗太郎とお庭を見てたの。」
「そうなんだ、栗ちゃん楽しかった?」
沙織の質問に栗太郎が大きく尻尾を振った。
沙織は、夕方までタキの世話をしていた。
タキは、事故の後遺症で足と腰が悪い。
そのため、沙織がヘルパーとしてきている。

「ただいま!」
小学生のあゆみが学校から帰ってきた。
「おかえりー。」
タキの足をマッサージしていた沙織が返事した。
「沙織さんこんにちは!おばあちゃん、栗ちゃんただいま!」
あゆみは、ランドセルを背負ってタキの部屋にきた。
「手を洗っていらしゃい。おやつ用意するからね。」
「おばあちゃん、私やるよ。栗ちゃんの隣に座って食べていい?」
あゆみが、タキに聞いた。栗太郎もタキの顔を見た。
「いいわよ。」
「おばあちゃん、ありがとう!」
あゆみは、飛び跳ねながらキッチンに向かった。
「栗ちゃんも、嬉しい?」
沙織がタキの足のマッサージを続けながら聞いた。
栗太郎は、
「ワン!!」
と吠えた。
「あまり吠えないのに・・・」
タキは、ちょっとはにかんだ笑顔を見せた。
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