家族の時間

渉が訓練所に戻ってくると、五十嵐が菜摘と一緒に待っていた。
｢先生、すいません｡｣
｢石橋君､いいんだよ｡それより､お父さんに連絡はいれたのかい?｣
五十嵐の問いに､渉は首を横に振った｡
｢まだなら､早くしたほうがいい｡｣
五十嵐の言葉に渉は携帯を出し､健太の番号を押した｡


健太は､遅めの昼休みに真穂と鞠子を呼んだ｡
｢おやつ休憩だ｡そして､さっき母さんさんから連絡があって､志穂が合格したそうだ｡｣
健太の言葉に真穂と鞠子は抱き合って喜んだ｡
その時､健太の携帯がなった｡
｢渉だ｡イヤな感じがする｡｣
健太は電話を取った｡
｢どうした?何かあったのかい?｣
健太の問いに渉は答えた｡
健太の顔から､笑みがなくなるのを､不安そうに真穂と鞠子が見ていた｡
｢わかった｡志穂と香苗ちゃんはそこに一緒にいるんだな｡母さんさんには､父さんから連絡する｡すぐ病院に行ってくれ｡｣
健太は携帯をきると内線をまわした｡
そして細かい指示をした｡
そして､顔を上げると真穂を見た｡
｢どうしたの､おじさん?｣
｢江梨子さんが､亡くなった｡｣
健太の言葉に､真穂は動けなくなった｡