家族の時間
健太は家に電話をした。
「麻子、落ち着いて聴くんだ。」
健太の声に麻子は不安が膨れ上がった。
「江梨子さんが亡くなった。」
健太の言葉は麻子に衝撃を与えた。
健太の声は、麻子になかなか届かなかった。
「麻子!麻子!!」
健太は何度も呼んだ。
「父さんどうしたの?」
麻子が動けなくなっていたので、かわって衛が電話に出た。
「落ち着いて聴くんだ。江梨子さんが亡くなった。渉が病院に向かってる。母さんにすぐに支度するように言いなさい。」
「わかった。…おばあちゃんいないよ。あかりとリハビリに行ってる。」
衛は啓悟を手招きで呼んだ。
「なら、あかりに五十嵐動物病院に行くように言いなさい。志穂と香苗ちゃんと美奈子ちゃんと吾郎ちゃんがいるから、連れて帰るように言いなさい。」
啓悟が二階にいる健を呼んで、状況を説明し始めた。
「お母さんを連れて、4人で病院にきなさい。」
「真穂はどうしてる?」
衛の質問に啓悟は顔を上げた。
真穂は震えていた。
「真穂は、震えて動けなくなっているよ。翔のお店に行くように鞠子ちゃんと真田(さなだ)さんにたのんだ。」
真田さんは、ウエディングプランナーで、今、真穂達が手伝いをしている。
啓悟の事が心配したが、健太は衛に麻子の事をたのんだ。
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