家族の時間
夜の病院は静かだった。
麻子と真吾は江梨子の思い出話をした。
「先週、俺、会社を辞めたんです。今日、ハローワークに行く途中で、事故にあったんです。」
真吾は坦々と喋った。
「嫌かもしれないけど、うちに来なさい。うちから仕事探しなさい。」
麻子は真吾に言った。
真吾は頷いた。
「ないてるの?」
あかりが病室のドアを開けて顔をのぞかせた。
「あかり、ひとりで来たの?」
麻子が心配して聞いた。
「ひとりじゃないよ、翔と沙織と来たの。隆文さんの替わりに院長先生がくることになったの。それでついでに乗せてもらったの。」
「翔どこ?」
麻子は聞いた。
「病院は走っては駄目!」
開いたドアから、沙織と翔が入ってきた。
「あかり走るなよ、真吾、美奈子ちゃん達は眠ったから。」
翔は麻子にお弁当を渡した。
「ご飯食べてないだろ。」
「ありがとう。隆文君も何食べてないのよ。」
「兄にはあかりが走って病室に行ったので、追いかける途中で渡しました。」
「父さん達には兄貴と健が持っていたよ。」
翔は麻子を安心させた。
「それでは、帰ろう。」
「もう帰るの?」
あかりが翔に言った。
「真吾、じゃあな。」
翔は病室を出た。
「あかり!長居はいけないわ。では、おばさん、バイバイ。」
沙織はあかりを引っ張って病室を出た。
「楽しそうですね。」
真吾の言葉に麻子は苦笑いをした。
< 61 / 201 >

この作品をシェア

pagetop