家族の時間
啓悟の高校の正門に麻子が立っていた。
そこへ一台のタクシーが到着した。
真穂が降りてきた。
「おばさん、ごめんなさい!」
「真穂、意外と早かったわ。それより、啓悟が心配して何度も来たのよ。さぁ、講堂に行きましょう。」
麻子が真穂と一緒に講堂に入って行った。
「久しぶりだね。私の時と同じだね。」
真穂はこの学校の卒業生だ。
「真穂、なんで寝てたの?」
麻子の言葉に真穂は笑った。
「笑ってごまかすな。」
「テレビを見てて、ちょっと…」
真穂は歩きながら行った。
麻子は呆れて口がきけなかった。
「どこからタクシーに乗ってきたの?」
「…家から。おばあちゃんに言われて呼んだの。」
二人が講堂に入ると同時に卒業式が始まった。
「間に合ってよかった。」
真穂は胸をなで下ろした。
卒業式は厳かにおこなわれた。
卒業式が終わると、麻子と真穂は啓悟を捜した。
啓悟は二人を見つけて近寄ってきた。
「姉ちゃん、遅れるなよ。…二人ともありがとう。」
「啓悟、卒業おめでとう。友達と遊んで遅くなりそうなら連絡いれなさい。」
真穂も麻子の言葉に頷いた。そして、
「亡くなった父さん、母さんも啓悟の卒業を喜んでるわ。」
と言って啓悟をみた。
啓悟も真穂の言葉をかみしめた。
< 68 / 201 >

この作品をシェア

pagetop