家族の時間
真吾は二階が見たかった。
しかし、動けないので言えなかった。
「真吾兄ちゃん、私のお部屋見てほしい。」
由美子が夕食が終わって言った。
「由美子、お兄ちゃん二階に上がれないよ。」
美奈子が言うと由美子は悲しそうな顔をした。
それが伝染したのか、あゆみも悲しそうな顔をした。
「おじさん、真吾兄ちゃんをおぶって、お部屋に連れて行って。」
志穂が言ったのを聞いて真吾は驚いた。
「真吾、家にはルールがあるんだ。」
健太は真吾を背負った。
「どんなルールですか?」
「渉のことをこども達は渉あんちゃんと呼ぶんだ。翔のことは翔お兄ちゃん。健や衛、啓悟のことは兄ちゃんをつけて呼んでる。あかりは渉と翔を呼び捨てしてるがな。」
健太は一息ついた。
「あかりと真穂は姉さん、志穂と美奈子は姉ちゃん。真吾もここにきたら、年下の子供達から兄ちゃんと呼ばれるよ。さぁ、ここが真吾が退院したら、生活する吾郎との部屋だ。」
後ろから渉が車椅子を持ってきていた。
真吾は健太の背中から車椅子に座った。
廊下は車椅子の横に人が一人以上立てるぐらい広い。
真吾の車椅子を吾郎と由美子がおした。
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