家族の時間

麻子は待合室にある椅子に座った｡
｢どうしょう…｡｣
｢私､健をあてにしてきたからどうやって帰ろう｡｣麻子は健を見た｡
｢おばさん､今日沙織がヘルパーとしてお家に行ってますよね｡｣
早苗が真吾の車椅子をおしてやってきた｡
｢沙織が車で出掛けたから､うちの主人が健君の車を運転して､かえりに沙織と一緒に帰ってもらう｡｣
沙織は早苗の妹で早苗は内科の先生である｡
｢私が本当は運転したいのですが､マニュアル車はダメなんです｡｣
｢けど､悪いわ｡｣
麻子は早苗に言った｡
｢健君の怪我の原因は､祐理の飛び出しだから､それぐらいさして下さい､おばさん｡｣
早苗は頭を下げた｡
｢わかった､ありがとう｡…どうして葵ちゃんがここにいるの?｣
麻子は葵に聞いた｡
｢私の姉がこの病院で看護婦をしていて､今日飲み会になったから車を取りに来てってメールがきたんで､家から病院まで行こうとしたんです｡駅前で､健君が見つけてくれて病院にきたんです｡｣
葵は一気に言った｡
｢私が祐理ちゃんの飛び出したを見つけて､私が飛び出したから健君が私たちを助け出すためにこの怪我をする事になったんです｡｣
葵は本当に申し訳なく立っていた｡
｢葵はどうやって帰る?｣
健が聞いた｡
葵…呼び捨てだわ｡
麻子は興味深く二人を見ていた｡