あくまで天使です。
いち早く声のしたほう、私の背後を振り返った。
背の高い黒コートが月明かりに揺れる。顔の半分が反射してしまい、こちらからはうかがえない。
だが、顔を上げてくれたおかげで片目が見えた。艶のある黒だ。
白い歯を自慢するように剥き、小馬鹿にするような微笑み。
「俺がお前を幸せにしてやるよ」
ありがたく思え、と言う前にその広く大きな胸に飛び込んで行った。
貴方がいるから私は幸せになれるんだ。
あんたは悪魔みたいだけど、私にとっては幸せを運ぶ天使そのものだよ、とはっきり言えるのはまだまだ先になるだろう。
素直になるまで待っていてくれるはずだ。だってあいつは
私だけの悪魔で天使だから。
END