珈琲時間
12/25 来年は?
 「え? せっかくのクリスマスなのに??」

 ランチタイム。
 今日まで限定のツリーで彩られた町並みを眺めながら、クリスマス特製プレートランチを食べていると、同僚の菜々が「信じられない!」と天を仰いだ。

 「せっかくのクリスマスだからじゃない」
 その反応が腑に落ちず、言い返してみるものの、菜々はぶんぶんと首を振る。
 「何言ってるの! ああ、もう。そんなんだったら、合コン誘ったのに!」
 「いやいや、誘われても断るから、わたし」

 「せっかくのクリスマスに、家族と家でご飯なんて、お年頃の女性のクリスマスじゃないよ!」

 お年頃の女性、という表現が気になったものの、菜々の勢いに圧倒される。

 (ええー、家族でクリスマス、嫌いじゃないんだけどなぁ)

 今年は……というより、毎年クリスマスは家族でお家パーティしかしたことがないから、疑うことなくクリスマスは家で過ごすものだと思っていた。

 (恋人とー、とか憧れないわけではなんだけど)

 機会がないのだから、しょうがない。
 家でケーキが待っているのに、わざわざ出かける必要もないと思うし。
 結局、菜々に「せっかくなのに」と何度も繰り返され、ランチを終了して戻る途中、エレベーターで同期メンバーと乗り合わせた。
 男女合計8人。
 久しく顔を合わせる人たちもいて、夏の研修旅行以来だねぇ、と話が弾む。

 「あ、そうそう! 遥ったら、今日のクリスマス家で家族とパーティだっていうのよー! もー信じらんない」

 そんな中、さっきのことを思い出したのか、菜々が他のメンバーにわたしの今日の予定をバラす。
 「あれ? 遥、今日淋しい子なの?」
 「や、家族と過ごすって言ってるじゃん。全然淋しくないから」
 「なんだー、言えば誰か紹介してやったのに」
 「や、だーかーらー、家族とチキン食べて、ケーキ食べるから。全然淋しくないから!!」

 ちくしょう、世の中恋人と過ごさなきゃ、淋しい奴認定されるのかと悲しくなっていると、ずっと黙っていた新島が「俺も」と呟いた。 
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